上森祥平 Shohei Uwamori
東京藝術大学在学中に日本音楽コンクール第1位、及び「松下賞」受賞。各地で開催されたデビューリサイタルでは、その高い表現力や表情豊かな包容力が誌上で高く評価された。1999、2000年宮崎国際室内楽音楽祭でアイザック・スターン、エマニュエル・アックス、ジュリアード・クァルテットの各氏に師事。この模様はNHK総合、BS他で放送された。東京藝術大学にてヨーヨー・マ氏のマスタークラスを受講。2001年ベルリン芸術大学留学。2004年J.S.バッハ無伴奏チェロ組曲連続演奏会で成功を収め、誌上で絶賛される。パブロ・カザルス国際チェロコンクール、エマニュエル・フォイアマン・グランプリ、セミファイナリスト。欧州各地で演奏活動の後、2005年ドイツ国歌演奏資格を取得し、ベルリン藝術大学を卒業。帰国後はソロ・室内楽・主要オーケストラ客演首席等で活躍するほか、東京藝術大学で後進の育成に力を注ぐ。特にドイツ三大Bチェロ作品全曲リサイタルシリーズでは、ベートーヴェン(2005年)、ブラームス(2006年)のソナタを一夜で演奏、好評を博す。2008年「熱狂の日」音楽祭、「東京オペラの森」音楽祭、NHK-FM名曲リサイタル出演。全国各地でバッハ無伴奏チェロ組曲全曲演奏会を開催。小林研一郎氏指揮・藝大フィルハーモニア、下野竜也氏指揮・大阪フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、東京シティ・フィル、京都市交響楽団と共演。ヴォルフガング・ベッチャー、河野文昭、山崎伸子の各氏に師事。京都市藝術文化特別奨励者。
批評
J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲 第4回 上森祥平
チェリストたちが日替わりでバッハの無伴奏に挑む企画の第4回。
上森は水際立った腕の冴えだが、それを決してひけらかさず、ずしりと手応えのあるモノローグを広げる。
前半と後半の最初にバッハと異なる時代の作品で露払い。これで時代の空気と、バッハの独創性が対照される。シェンクのアダージョの旋律作法が沈黙の余韻を残すなか、バッハの無伴奏第1。鮮やかに歌うのだ。次の第5とともに、楽句の連結点が円滑で一瞬の停滞も無い。時代様式を意識した奏法ながら、それが普段着のように自然。D・ガブリエッリの第5リチェルカーレでも、乱雑に投げ出された素材を非凡な集中で束ねてゆく手腕は見事だ。バッハの3番では切れ味のよさが光り、なんとなくの音は一音も無い。舞踏と歌が渾然一体となる華やぎと、内へと向かう思索の深さが共存して、むしろ詩的なまでの音空間を造り出していく。その奥行きは無類。
-音楽の友- 2004年6月号-
岡崎・上森・田辺のピアノ三重奏-それぞれ個性発揮し白熱
春の音楽祭「東京のオペラの森」の室内楽コンサートに、見るからに斬新なピアノ三重奏が登場した(5日、上野・旧東京音楽学校奏楽室。)ヴァイオリンが05年ミュンヘン国際コンクールの覇者、岡崎慶輔。チェロは97年日本音コン第1位の上森祥平。そしてピアノに、卓越したソロの実績に加え、室内楽にも進境著しい田辺京子を配したトリオである。前半にはモーツァルトのピアノ三重奏曲第1番が演奏されたが、結果としてこれはほんの前座という印象。なるほど曲は申し分なく魅力的だし、3人のすがすがしい呼吸が、その典雅な美しさを香り高く歌い上げる。・・・それに対して後半、今年のテーマ作曲家チャイコフスキーの「偉大なる芸術家の思い出に」では、一転してピアノ・トリオならではの白熱したシーンが展開した。しかもとかくごってりした表現に傾きがちなこの超大作を前に、終始引き締まった重奏を達成しつつ、そこに悲哀の色を美しく浮かび上がらせた点がすばらしい。いわゆるコンクール荒らしのイメージにはほど遠い情感豊かな音楽性に加え、若々しい積極性も兼ね備えたヴァイオリンと、剛毅(ごうき)で線の太いチェロがうまく噛(か)み合い、さらに盤石のピアノがアンサンブルを隙(すき)なく束ねるなど、それぞれが遺憾なく個性を発揮した。・・・
-毎日新聞 2008年4月14日 東京夕刊-
